第6章 春の虹
ぼんやりと目を開けた。
腕に繋がれた点滴に薬が入っているのだろう。
少し、ウトウトしたら、胃の痛みはだいぶマシになっていた。
ストレス性胃炎と診断された。
貧血と脱水も併発してて、医師から少し休んでから帰りなさい、と言われた。
事情を話すと、真顔になった相葉さんに、荷物とってくるから、このままここにいろと言われた。
……だから、おとなしく寝てる。
入院するわけじゃないから、ベッドはかたいし、この薬品の匂いとかも嫌いだから、早く帰りたいのに、ぶら下げられた点滴の袋は、まだ三分の一くらい残ってる。
俺は、無機質な壁を見上げ、時間を確認した。
とうに終業時間はすぎてる。
相葉さんは、きっと俺の分の仕事も片付けてくれてから、ここに戻って来てくれるのだろう。
また迷惑かけちゃった………
自分だけ見てもらうキッカケが、毎回特殊すぎて、俺は相葉さんの荷物にしかなってないよなぁ、と思う。
それで、そばにいたいなんて、片腹痛い。
涙が浮かぶ。
早くこの気持ちに蹴りをつけなきゃ、俺は相葉さんの顔が見れない。
浮かんだ涙が筋になって、こめかみを伝った。