第4章 夕虹
ふわふわした絨毯を裸足で歩いて、窓際に近づき、ぴったりと閉めきっていた分厚いカーテンを勢いよく開ける。
眼下に広がるのは、立ち並ぶ多くのビル。
雨が降っているせいか、遠くの方は霞んでいるものの見事な夜景だった。
このホテルは都心にある高級ホテルだ。
バイトでは必ずここを使う。
よくわからないが、社会的地位の高いやつとかも相手にすることもあるから、陳腐なビジネスホテルやファッションホテルでは具合が悪いらしい。
……だけど。こんな用途に使われる部屋は、気の毒だよなぁ。
俺は、自嘲気味に吐息をついてから、真っ裸のまま、ジンジャーエールをごくごく飲んだ。
……今何時だろ?
空のボトルをテーブルにおいて、ベッド脇のデジタル時計に目を走らせれば、もうすぐ23時。
そろそろ俺も帰り支度をしなきゃ。
部屋はいつも土日で押さえているから、店長からは泊まっていってもかまわないとは言われてる。
だけど、ホテルの備品ではなく、自分の家のシャンプーとボディーソープで、リセットしたい想いが俺にはあった。
加えて、次の日の朝、起きるのが億劫なのもあった。
家ならば、惰眠を貪れるからだ。
俺は、そのへんで脱ぎ捨てた下着を探して、はいた。
中出しされてたら面倒だなぁと思っていたけど……大丈夫そうだ。