第4章 夕虹
黒いキャップを深くかぶり、インロックの要領で部屋を出た。
明日の朝、やってきた店長か副店長がもうひとつ持ってるキーで部屋の中に入り、俺らが使ったキーを回収して精算。
……だれが考えたか知らないけど、よくできた仕組みだよな……。
静かな廊下を足早に通り抜ける。
乗り込んだエレベーターには誰もいなかった。
なんとなくホッとして、一階のボタンを押して、壁によりかかった。
自分のさっきしてきた行為から、現実に戻る、この時間が苦手だ。
特にまだ未成年というのを隠してる罪悪感が常につきまとってるせいかもしれない。
あと半年たてば18だから、いろいろ窮屈な規制が緩むはずだから、もう少しの我慢だ。
下降を始めた箱の、階数を示すデジタルの数字をなんとなく見上げ。
ミルクティー飲みてぇな……と、ぼんやり思った。
甘いものが欲しいのは疲れてるからか?
駅前のコンビニで、チョコも買って帰ろう。
静かに開いたエレベーターの扉からするりと外にでる。
でかいホテルだから、エレベーターから出口に向かう途中に、ホテルの人間とあまり顔をあわせる心配もない。
俺は、なるべく気配を消して夜の街に出た。