第4章 夕虹
裸のまま、ベッドからおり、備え付けの冷蔵庫から冷えた水を取る。
息を吸うのも惜しい勢いで、ごくんごくんと、一気飲みした。
砂が吸いこむように、水が体すみずみまで染み渡ってゆくのを感じる。
さすがに体中の水分が抜けきっていた。
汗も涙も体液も、どれほど出ていったか。
軽い頭痛がするのは、脱水になりかけてたのかもしれない。
ボトル一本空にして、もうひとつジンジャーエールのボトルを取り出す。
キャップをあけ、流し込みながら、机に放り投げたままのスマホを手に取った。
この行為はあくまでビジネスであり、愛も情もいらない。
よって、朝まで共に過ごす必要もない。
だから、やることやって、終わったら報告しろ、と店長には念押しされてる。
店長は、その報告によって、俺たちの無事を確認するそうだ。
中には変な趣味のやつがいて、ひどく痛め付けられることがないとは限らない。
客と契約してる時間をすぎたら、店長もしくは副店長が様子を見にくることになってる。
一回疲れはてて連絡も忘れてウトウトしてたら、やってきた店長に尻をひっぱたかれたことも。
俺はアプリを開き、店長のLINEに、《終了》とだけうった。
すぐに既読がつき、お疲れ様。気をつけて帰れ、といつものように返事がきた。