第6章 春の虹
すっかり元気がなくなってしまった二宮くんは、ココアの入ったマグカップを両手で抱えて、じっと黙ってる。
俺は、明るく声をかけた。
「あいつらが買ってきたケーキ…まだあるけど食う?」
すると、二宮くんは、くすっと少し笑って、顔をあげた。
「………まだあるんですか(笑)」
「うん。明日のお茶に食べてって。確かゼリーもあったよ」
「ありがとうございます……でも、もうお腹いっぱいで…」
「……そか。そうだよね」
「…………」
「…………」
………うーん……困った…
1時間前と違って全然会話も弾まない。
智たちと鉢合してしまったことで、二宮くんが何か辛いことを思い出してしまったのなら、悪いことしたなぁ…。
どうしようかな、と思案していると、
「なにも…きかないんですね」
二宮くんがぽつりと言った。
俺は、考えながら、ゆっくりと答えた。
「………聞いて欲しかったら、聞く準備は俺にはあるよ。でも、言いたくないなら言わなくていい」
無理に聞こうなんて思ってない、と、俺は逃げ道をあげた。
そんな辛そうな顔をしてるのに。
笑い話に昇華できてないものは、無理強いするものじゃないと俺は思う。
もちろん喋って心が軽くなるなら別だ。