第6章 春の虹
ガチャガチャとせわしなく食器を片付ける音がして、相葉さんが玄関の方に小走りでかけてく足音がして。
扉があけられたのだろう。
どうしたの?都合悪かった?
という、気遣うサトの声が聞こえてきて、俺はぐっと拳を握った。
長いこと聞いていなかった幼なじみの声は、全然かわってなくて、胸が熱くなる。
やがて、どやどやと3人がリビングに入ってきた。
寝室と隔ててるのは、すりガラスだから、向こうからこっちは見えない。
だが、下手に動いたら影がうつりこみそうで、人がいる気配は勘づかれそうだった。
俺はそっと寝室の1番端に移動して、座り込んだ。
「どうしたの?今日は」
「こないださ、KINGで奢ってくれたでしょ。その御礼にケーキ買ってきたよ。はい」
「ええ〜いいのに」
「雅紀さんの好きなチョコレートケーキもありますよ」
「…うわ、ほんとだ。ありがとう」
コーヒーいれるね、と、相葉さんの声が少し遠ざかる。
……相葉さん、今日2個目のケーキだ。
こんな状況だけど、ちょっとだけおかしくて、俺は膝に顔をうずめてくすっと笑ってしまった。