第6章 春の虹
「え?」
困惑している俺を尻目に、ささっとカードで支払いをすませ、行くよ、と、颯爽と歩いてゆく相葉さんを慌てて追いかけた。
追いついた俺に、相葉さんは、さらりと言った。
「誕生日はさ。ケーキでしょ」
「はぁ……」
「美味しいケーキ屋がこの近くにあってさ。イートインもできるんだけどさ」
と、そこまでいって相葉さんは立ち止まった。
「あ、でも野郎二人でケーキって、二宮的にはどう?」
「………あ、別に全然いいです」
てか、この展開で断ったら、相葉さんがしゅんとしてしまうのは目に見えてて、そんなこといえないと思った。
「ほんと?」
実際、すごく嬉しそうな顔してる。
なんだか俺も嬉しくなって、はい、と頷いた。
相葉さんが喜ぶなら、野郎二人でケーキだろうが、パフェだろうが、恥ずかしくもない。
なんだっていいや、と思う。
大体、これも俺の誕生日を祝ってくれる目的なのだろうしな。
そんな自分の心のありかたに自分で驚きつつ、相葉さんと歩調をあわせて、夜の街を歩くこの時間が、とても心地よかった。