第6章 春の虹
勝利は、しょうがない母ですよね、という顔をしながらも焦っているようで、オロオロしながら荷物を手にする。
その様子を黙ってみていたヨコは、
「……俺も行ったるわ」
と、静かに呟き、グラスのお冷やをごくごくと飲み干した。
勝利は、え?!と、固まってる。
ヨコはなんでもない事のように立ち上がりながら、勝利の肩をポンポンと叩いた。
「……1人で母ちゃんどうやって運ぶねん。俺も飲んでもうたから、タクシー乗らなあかんけど、1人より2人の方が動けるやろ」
「横山さん…」
「な。相葉ちゃん、2人でこんくらいでいい?」
ヨコが財布から札をガサガサと出してきた。
「ん。二千円でいいよ。早くいきな」
そこから数枚ぬきとり、先を促すと、勝利が、すみません、と、ぺこりと礼をした。
ヨコもカバンを手に取り、俺らに手を振る。
「あんがと。……ニノごめんな。相葉ちゃんと続きやっといてな」
「ごめんね、二宮」
「あ、全然いいです。それより急いであげてください」
二宮くんが促すと、ヨコは出口に向かって歩き出した。
「行くで、勝利」
「はい!」
「おまたせしましたぁ」
そこへ、ちょうど、さっきのオーダーした品がとどいた。
「……………」
2人しかいなくなったテーブルに3つのグラス。
二宮くんを見ると、彼は、心配そうに俺を見上げてる。
「…とりあえず、もっかい乾杯しようか」