第6章 春の虹
勝利とヨコの漫才は続く。
「そんなんだから、誕生日俺なんかと過ごすことになるんですよ?」
「……別に、ええもん」
「ええもんって」
口をとがらすヨコと、やれやれというような勝利。
そのまま聞き流しそうになって、ふと引っかかった。
……誕生日?
「…ヨコ、おまえ、最近誕生日だったのか?」
「うん。ああ、でも、ゴールデンウィーク明けやで。んなクソ忙しい時に、誕生日もなんもあれへんやろ」
そこへ、すかさず勝利が突っ込んだ。
「寂しいから、夕飯つきあってくれって言ったの、どこの誰です?」
「だって、そうだからといって、ほんまに1人は嫌やんか」
俺は、呆れてため息をついた。
ヨコって、こういうとこ水くさいよな、って思う。
普段は遠慮ないくせに。
「言えばいいのに。1杯くらい飲みに連れてってやるから来年から俺も誘えよ」
「うわぁ、相葉ちゃん優しい〜!」
「係長、俺、俺!10月です!誕生日!」
「……分かった分かった。俺、忘れるから近くになったら各自、自己申告してくれ」
ヨコと勝利がわちゃわちゃ騒ぐのを、はいはいとおさめた。
誕生日は、俺は最近はいつも智たちが祝ってくれるから1人ってことはない。
智たちは、寂しがりの俺の性質を見抜いてるんだろうな。
「……二宮は?」
「……え?」
「誕生日」
「あ……えと、来週…です」
「え」
俺はキョトンとしてしまった。