第6章 春の虹
静かな室内に、コーヒーメーカーが、コポコポっと音をたてた。
再び漂う香ばしいいい香りに、おかわりいる?と、聞かれたけど、お腹いっぱいだった俺は遠慮する。
相葉さんは、並々注いだコーヒーを手に、……不思議な縁だと思うよ、と呟いた。
「十数年後に、まさか自分がフォローする側になるとは思ってなかったなぁ」
「…………すみません」
「だから、謝るなっての。ってか……惚れるなよ?俺に」
「……へっ?」
ドキリとして、思わず顔を上げる。
ミスをきっかけに、恋を始めた相葉さんは悪戯っぽくクスクス笑って俺の目をじっと見た。
「俺はやめときなよ?」
「……は…はい」
いやいや、最初からそれはないし!
俺が慌ててぶんぶん首をふると、相葉さんは、弾けるように笑った。
100パーセントからかわれてるのは分かるけど、全力で否定するのも失礼な気がして、それ以上の反応に困ってると、
「…………次は二宮が、将来後輩を助けてあげて」
「…………」
「持ち回りだからね」
「…………はい」
不意に真面目な顔になった相葉さんに、俺も唇を引き結び、こくりと頷いた。