第6章 春の虹
「……俺もさ、二宮くらいのときに大失敗したんだよね」
食後のコーヒーをいただいてると、相葉さんは、懐かしそうに頬杖をついた。
俺は湯気のたつマグカップを両手でもちながら、信じられないとばかりに首を傾げる。
「係長が?係長、失敗なんかするんですか」
「俺だってたくさんしてるよ、そんなの」
俺をなんだと思ってんの、と、相葉さんは苦笑する。
「ちなみに、俺の失敗はマジえぐいよ。 二宮なんか可愛いもんだ」
「……それは自分の中の過去イチの失敗ですか」
「ああ、もうぶっちぎり」
「……何をしたんですか」
ちょっと興味がわいてたずねると、相葉さんは、ずずっとコーヒーをすすり、真面目な顔で声をひそめた。
「………見積もりの桁を間違えたんだ」
……………ケタ
「………ほんとですか」
「……」
相葉さんは大真面目に頷いた。
「今だから笑い話だけどね」
そうして、ぷっと吹き出した。