第6章 春の虹
「うわぁ…」
感嘆の声と同時に腹の虫がなり、自分も空腹だったことを思い出す。
机の上は、こんな短時間でよく出来たな、と思うくらいの品揃えだ。
揚げたてのコロッケに、コーンスープ、サラダ。
バゲット。
驚いて声も出ない俺に、炭酸水をグラスに注いでくれながら、相葉さんは事も無げに、笑う。
「休日にたくさん作って冷凍してたのを、解凍するだけだから、案外すぐなんだよ?」
「いや、でも…」
主婦顔負けじゃん。
母ちゃんの料理より全然お洒落だ。
お詫びにラーメンをご馳走しようと思ってたのが、恥ずかしくなるくらいだ。
こんな豪華な夕食いただいていいんだろうか。
俺が、とても恐縮しながら椅子に座ってるのが分かったのだろう。
相葉さんは、無理やり誘ってごめんね、と言った。
「一人暮らしだとさ、こうやって誰かとご飯食べることってないんだよね。このコロッケなんかもさ、最高に上手くできたのに、誰もほめてくれないのがなんか寂しくってさ」
「そう…ですか」
「うん。だから、このコロッケの感想聞かせてくれたらそれで充分」
さぁ、食べよ、と相葉さんは、箸を手にした。
「……はい」
俺も、いただきます、とペコッとお辞儀をした。