第6章 春の虹
男の一人暮らしにしたら、とても綺麗に片付いてる部屋だと思う。
部屋のすみに散らばってるファッション雑誌なんか、それすらもお洒落にみえるから不思議だ。
俺の部屋の積み上げたマンガとは、雲泥の差だ。
あまりキョロキョロしたら失礼かと思いながらも、興味深く目を走らせてたら、ふと窓際におかれた小さなキャビネットの上の写真立てに気がついた。
いくつも並べられたそれらは、完全な相葉さんのプライベートだ。
興味がわき、思わずそっと立ち上がって、それらを見にゆく。
……へぇ…
若い相葉さんと…少しばかり年上と思われる強面の男性が並んで映ってる。
どれもこれも、とても楽しそうで幸せそうな笑顔だ。
くっついた頭。繋がれた指。
友達どうしではあまりない距離感の写真に、これは亡くなった相葉さんの恋人であることを瞬時に理解した。
同時にそれはサトのお父さんであることも、わかった。
初めて見るその人を見て、…サトは、父親には似てないんだな、と思った。