第6章 春の虹
………で。
なんで、こうなるんだろ。
「テレビでもみて適当に遊んでてね」
「……はい」
朗らかな相葉さんの声に、ギクシャクと笑って頷いた俺は、柔らかなソファに座ったまま動けないでいた。
相葉さんのお願いを、力強く受け入れた結果、俺はここ…相葉さんの家にいる。
『こないだ作ったコロッケが、すごく美味しくできたんだ。だから、味見しにきてよ』
『…え…今からでは、ご迷惑なんじゃ…』
『明日休みだろ。家近いしいいじゃん』
それってどうなの?と、戸惑う俺に、俺のお願いきいてくれるって言ったよね?と、冗談ぽく圧をかけられ…俺は、はい、と頷くことしかできなかった。
モスグリーンのエプロンをつけた相葉さんは、「冷凍してるのを、揚げるだけだからすぐだよ〜」と、言いながら、なにやらガチャガチャと忙しくしてる。
どうしよう……
俺は、戸惑いながら考える。
でも…でも、連れて来られちゃったものはしょうがないよな。
相葉さんのお願いをきくことが、お詫びのかわりになるなら、良いのかな。
コロッケいただいたら、早々に退散したらいっか。
そこまで考えた俺は、腹をきめて、体からそっと力を抜いた。