第4章 夕虹
大野さんは、この鉄板の組み合わせを、ほぼ毎日食べてるんだ、と笑う。
えらく、少食だとは思ったけど、いつもがいつもなんだな。
ならば、一般サイズの定食なんか食べれっこないんじゃねーの?
そう思って、
「学食は?」
と、コロッケパンの袋を開きながら聞いてみる。
すると、
「……人が多いのが嫌いだから、あまり行ったことない」
と、なんとも意外な返事。
「ふ……俺とおなじだ」
「松本も?」
「基本、俺は並ぶとか嫌いだから」
「あはは……そんな感じする」
ぺろっと指を舐めて、パンを食べ終わった大野さんは、おかしそうにくすくす笑った。
毎朝、バスを降りてから学校までの道すがら、ポツポツ話をしてきたけど、こうやってのんびりと腰をすえて話すのは初めてで。
大野さんはこんな風に柔らかに笑うんだ、とか。
こんな目で俺を見てるんだ、とか。
……いろんな発見がある。
大テーブルの、むかいの席ではカップルが教科書を開いて頭をつきあわせてた。
もうすぐ期末テストだ。
俺は、そうだ、と思いつく。
「ねぇ……大野さん。勉強何が得意?」
「全部不得意」
「もう。一年のレベルなら分かるでしょ?」
「……さぁなぁ……」
「分からないところがあるんだけど。今度教えて?」
「……俺が?」
大野さんは、驚いたように目を見開いた。