第4章 夕虹
運良く、人がまばらな階にめぐりあえて、二人並んで座ることができた。
持ってるビニールから、がさがさとカフェオレと大量のパンを取り出してると、大野さんが驚いたように目を見開いた。
「すげ……そんなに食うの?」
「フツーだよ。でも、ちょっと多めに買ったから、大野さんも気になるのあったら食っていいよ」
「いや……俺はいいよ」
いいながら、大野さんは、イチゴオーレのパックにストローを差し、美味しそうに喉をならして飲んだ。
俺も、カレーパンの袋をあけて、かぶりつく。
……お
初めてこの学校のパンを食べたが、ピリ辛でなかなかに俺好みだ。
パクパクと五口くらいで食べ終わり、くしゃくしゃと包装紙を丸めてたら、大野さんが面白そうに俺を見てた。
「?なに?」
「……うまそうに食べるね」
「うん……そっか、一口あげたら良かった」
「……いやいや。そーゆー意味で言ったんじゃないよ(笑)」
大野さんは笑いながら、でも今度買ってみようかなぁと言い、あんパンをぱくりと食べた。
「…………」
なんだか……見惚れてしまう。
大野さんはただ、あんパンを咀嚼してるだけなのに。
綺麗な人は、何をしてても……それが例えモノを食ってる姿でも綺麗だな。
……つか、そもそもが可愛いんだよな、この人。
俺は、今日新たな発見をしてしまったことを、もう一度再確認してしまう。
メガネのせいで地味にみえるけど、目はタレ気味で優しい眼差しをしてるし、髪の毛も……雰囲気もフワフワしてる。
地味にみえるのは見せかけだけで、この人は美しさと可愛さをあわせ持った人なんじゃないかと思う。
だってさ……パンを食べる仕草まで可愛く見えてきたけど……。
俺……やばくね?
そんなことを思っていたら。
「松本は、いつもパン?」
不意に話しかけられて、俺は自分の想いを誤魔化すように、あたふたと次のコロッケパンに手をのばした。
「いや……いつもは弁当なんだけど……。大野さんは?」
「……俺はパンが多いかな」