第6章 春の虹
始末書といっても、すぐに書けるものでもないみたいだ。
今後、このようなことが起きないようどうするべきか、などの上司としての書式もあるみたいで、相葉さんは、うーん、とパソコンの前で唸ってる。
俺は、そばでただ立ってるわけにもいかず、自分も見積もりの間違いを訂正したりして、相葉さんのそばにいた。
「…もう遅いし、二宮は帰っていいよ」
ふと、相葉さんが、パソコンをたたく手を止めて時計を見上げた。
既に八時をまわっている。
「いえ…でも」
それはできないよ。
俺は、むぐむぐと俯く。
自分のせいで相葉さんが残業してるのに、俺だけ帰れるわけない。
そうだ、なにか俺も別の仕事しよう。
俺は、自分のデスクに戻って、取り引き先の資料をファイリングする事にする。
キャビネットから、リングファイルを数冊だしたり、ゴソゴソし始める俺に、帰る意思のないのを読み取った相葉さんは、肩をすくめ、
「んじゃ、あと30分くらいで仕上げちゃうね」
そう言って、再び真剣な眼差しで、画面に向かった。