第6章 春の虹
あー、食った食った、と相葉さんは、細いお腹をさする。
痩せの大食いって言葉はこの人にピッタリだろうな。
横山さんたちとも食べてきてるはずなのに、俺以上に食べてたし。
「あの…ご馳走様でした」
そして、結局全額相葉さんが払ってくれた。
俺が、恐縮しながらお礼をいうと、相葉さんはニコリとして、首を振った。
「単に二宮とメシが食べたかったんだ。こっちこそ突然おしかけて悪かったね」
「いえ…そんな」
「ゆずソーダ。うまかったろ?」
「はい。次からあれにします」
「ふふっ。俺らと一緒のときは無理に酒を飲まなくてもそれがいいよ」
アルコールがあまり得意ではない俺に、気をつかってくれる。
俺は頷いて、ゆっくり歩く相葉さんに並ぶ。
自棄になっていたのは確かだ。
酒に逃げようとしてたのも確かだ。
でも…相葉さんの人柄のおかげで、全てが昇華した気分だ。
俺の醜い妬みや恨みは、お門違いなのだと今さらながら納得できた。
だって、あれから何年たつ?
しかも向こうは俺をなんとも思ってないのに。
まさしく独り相撲ってやつだ。
相葉さんが俺なら…きっとサトたちに笑って、「やぁ」とでもいうに違いないな。
…今の俺には、笑うのは無理だけど、目をあわせることはできるかもしれない、と思った。
相葉さんみたいな人間になりたい、と思った。