• テキストサイズ

Attack 《気象系BL》

第6章 春の虹




目の前に、すっと見覚えのある俺のパスケースがだされた。


「はい」

「あ…ありがとうございます」


両手で思わず受け取った。
定期をなくしたら、洒落にならないとこだ。
どうやって落としたんだか。


「免許証も入ってんだろ。気をつけなくちゃ」

「すみません…」


優しく言いながら、相葉さんは、俺の目の前の椅子をひくもんだから、俺はギョッとして顔をあげた。


……え?


てっきり、パスケースを渡したらすぐに帰ると思っていたのに、相葉さんは近くを通った店員をつかまえて、


「生一つと、唐揚げちょうだい」


流れるようにオーダーをすませて、俺に向き直りニコリと笑った。


「せっかくだから、唐揚げも食べて帰りたいなと思って。いいだろ?」

「…よく食べますね」

「うん。ここの大好きだしさ」

「そう…ですか」


俺は迷って、自分のほぼ手付かずの枝豆の皿を、相葉さんに、どうぞ、とおしやった。

相葉さんは、ありがと、とおひさまのように笑った。


………………。


真っ黒でジクジクしてる俺の胸に、光がふわっと差し込んだ気がした。
/ 725ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp