第6章 春の虹
Kazu
通話が切れ、黒くなった画面をぼんやりと見つめた。
……なんでほんとのこと言っちゃったんだろ
まだ用事は終わってない、とか。
遠くの店をいう、とか。
嘘なんていくらでもつけたのに。
……3分で来るのか。
ウルトラマンみたいだ。
俺は腕時計をみて、ふっと笑った。
KINGを飛び出して、駅前まで来たはいいけど、まっすぐ帰る気にもなれなくて、足は自然といつもみんなで飲む居酒屋にむいた。
ビールを1杯だけ頼み、枝豆と揚げだし豆腐だけの夕飯をつついていたところへ、の相葉さんからの電話だった。
最初は無視しようと思った。
でも、相葉さんの朗らかな笑顔が脳裏によぎり……俺はそのまま無意識に通話ボタンをおして、耳にスマホをあてていた。
(……………はい)
(二宮?相葉だけど)
そのやりとりの間に、相葉さんの顔がみたいと思ってしまった。
多分、このいじけた自分が自分で嫌だったのと。
単純に、相葉さんの優しさに触れたかったのだろう。
「……オヤジみたいな晩飯食べてんじゃないよ」
穏やかな声音に顔を上げて、相葉さんのしょうがないな、という顔をみたとたん、泣きそうになって、慌てて唇をかんだ。