第6章 春の虹
「外?用事は終わったのかい?」
智らに会いたくなかったのがほんとならば、用事なんか無いのだろうけど、一応聞いてみる。
すると、素直な二宮くんは、ぽろりと返事をした。
「あ…はい」
「そう。今、どの辺にいるの?」
暗に持って行ってあげるということを匂わすと、
『いや、あの…明日でもいいですから』
戸惑うような声がかえってきた。
……俺にも会いたくないってか。
まぁ…想定内だ。
でも、1人で落ち込んでいるであろう小さな背中を想像すると、俺の性格が黙ってないんだよなぁ。
「家まではわざわざ行かないよ。おまえがいる場所がここから近いなら、持って行ってあげようかな、と思っただけ」
「…えっと…」
「どこ?」
「いつもの…居酒屋です」
「…オッケ。3分で着く」
目と鼻の先だ。
二宮くんが、1人で時間を潰す場所は、行き慣れた飲み屋。
俺の予測はあっていた。