第6章 春の虹
まだ飲み足りない、とごねるヨコを、明日もあるから、と宥めたおし、早めにお開きとなった。
俺自身、早く二宮くんにコンタクトをとりたいのもあったし。
だが、店の外にでても、ヨコはぶうぶう言っている。
「うそやん。帰んの?もう一件行こうな~」
「え、マジですか??今から?」
「ラーメン行こ。な、行こ。」
「やですよ」
「そんなん言わんと」
「やですって。ちょっと、係長たすけてー」
まんまとヨコに引きずられていく勝利に、ご愁傷さま、と手をふる。
顔は嫌がってないから大丈夫。
なんだかんだで、よいコンビだ。
俺は、彼らと反対方向である駅に足早に歩きながら、二宮くんに電話した。
あいつの性格上、上司からの電話を無視するわけはないと思った。
案の定、少しばかり長いコール音の末。
『……はい』
二宮くんの、小さな声がした。
なんだか、後ろがざわついてる。
外だな、と思った。
「あ、二宮?相葉だけど」
『お疲れ様です……どうしたんですか』
「今どこ?」
『……なんでですか』
「パスケース。店に落としてたよ」
『……………………あ』
自分の上着のポケットを確認したのだろう。
二宮くんの、ため息が聞こえた。