第4章 夕虹
大野さんは、うんと頷いて手にもってるものをこちらに見せた。
「これ、俺の鉄板。オススメだよ?」
俺は目が点になる。
昼飯じゃねーよ、おやつだろ、これ。
……今時の女子でも、まだ食うぞ。
「いや、ダメだろ……もっと食べないと」
だから具合悪くなるんだよ……と、いう言葉がでかけたが、それは飲み込んだ。
大野さんは、困ったように眉毛をさげて、肩をすくめた。
「……これだけあれば充分だし」
「……そうなのか?」
少食すぎて、引く。
ほんとに男子高校生だろうか。
俺のパン無理やり食べさせてやろっかなぁ……なんて思ってしまう。
「ほら。行きなよ」
大野さんは俺を促して、じゃあね、と歩いていこうとしたから、思わずその手を掴んだ。
「ちょっ……待って。大野さん誰かと待ち合わせてる?」
「?……いいや?」
「どこで食べるの」
「……教室戻ろっかな……って」
「じゃあ、一緒に食おう?」
俺の申し出に、大野さんの目が丸くなって……それから、優しく細められた。
「……わかった。フリースペースでも行こっか」
フリースペースとは、各階にあり、勉強しても飯を食っても、なんでも自由にできる場所だ。
学年をこえて利用できるから、女子や、カップルが使うのはよく見かけたけど。
「よかった。ちょっと買ってくる」
席があればいいな、と思いながら、俺は、待ってて、と大野さんに声をかけ、人だかりに飛び込んだ。
サンドイッチでも買って、大野さんとシェアしようかな、と考えながら。