第6章 春の虹
「知り合い?」
ヨコが、もう俺ら始めてるぞ、と俺のビールを寄せてくれる。
「ごめんごめん。あいつら身内みたいなもんなんだけど、久しぶりに会ったからつい」
テーブル席にもどり、乾杯とばかりに少しジョッキをあげて、俺も口をつけた。
冷えてて、うまい。
「あとで、健ちゃんが俺らにカクテル作ってくれるって」
「ほんとですかー?うわあ、俺なんにしよっかな」
「でも、勝利は、少し弱めで作ってもらわんと泥酔すんで。カクテルは口当たりいいから、するするいけるからな」
「大丈夫ですよう〜」
ブレーキをかけたヨコに対して、ふふっと笑った勝利が、何かに気づいたように頭を下げた。
「…あれ?」
勝利が、椅子の下に何かをみつけたようで、手探りでそれをひろう。
「…パスケース?」
茶色の皮のいいやつだ。
……どこかで見た気がする。
中身をちらりとみた勝利が、あーあーというように苦笑いした。
「ニノのじゃん…アイツ帰りどうしたんだろ」