第6章 春の虹
ぽんと肩をたたくと、智が怪訝そうに振り返り、俺をみとめて、目を見開いた。
「雅紀さん?…え?なんで?」
「うわ、お久しぶりです」
つられて一緒に振り返った智のパートナーである潤は、嬉しそうに笑った。
「仕事帰りかい?」
「うん。雅紀さんも?」
「そうだよ。会社のやつらとね」
テーブル席を振り返る。
智と潤は、俺の視線を追い、ふーん、と頷いた。
あんなに就職するといっていた智だが、俺のすすめもあり、高3の夏の終わり、突然、一念発起して勉強を始めた。
もともと頭はいいのだろう。
今まで知らなかっただけで、勉強の仕方を示してやったら、砂が水を吸うように、めきめきと学力をつけていった。
デザイン系の専門学校に入学した智は、成績優秀で、その能力をかわれて、今や、とある企業の製品開発部門にいる。
潤は、翔ちゃんと同じ大学に無事入学し、そのまま大手の商社に就職した。
そして、潤の就職と同時に、2人は部屋を借り、一緒に暮らし始めたのだ。
パートナーとして、2人で共に生きてゆく、と、彼らは嬉しそうに、俺と翔ちゃんの前で誓った。