第6章 春の虹
カウンターの端で、スーツ姿の青年が2人、仲良く肩を並べてお酒を楽しんでる。
後ろ姿であっても、すぐに分かった。
アイツら……
この広い都市に無数にあるうちの、たった1つの店なのに……何故、会ってしまうのだろう。
智たちが、この店と関わりが深いその理由はあとから知るのだけど。
俺は、その偶然を無念に感じてしまった。
……おそらくだけど。
二宮くんは、智に会いたくない何かがある。
彼らを見つけて……でも、気づかれたくなくて。
だから、帰った。
そうに違いなかった。
あの強ばった顔と、挙動不審な動きに、冷静な彼のらしくない姿を感じて、なんだか複雑な気持ちになった。
彼は、きちんと帰っただろうか。
明日は元気に仕事に来るだろうか。
もはや、俺にとっては可愛い後輩の1人になってる彼のことが、こんなにも気になるのは何故なんだろうな。
思いながら、ヨコが戻ってきたのを確認して立ち上がった。
勝利がきょとんと俺を見上げる。
「係長?」
「ごめん、ちょっと知り合いがいるから、声だけかけてくるね」
でも、同時に、俺にとっては智たちも大事な人間。
無視はできなかった。