第6章 春の虹
1番奥のテーブル席に案内される。
「reserve」と書かれた札をひきながら、どうぞ、と、そのスタッフは微笑んだ。
俺らは、促されるままに、ガタガタと席につく。
その人は薄暗い中でもわかる甘いマスクの男前。
容姿には似合わないほどのバリトンで、
「お待ちしておりました。横山さま」
と、一礼した。
思わず見惚れてしまうほど、優雅な仕草だ。
「おー、覚えててくれてる。めっちゃ嬉しい!」
「…もちろんです。のちほどオーダーうかがいに参りますね」
「北斗、今日、健ちゃんおる?」
横山さんは、のびあがって、カウンターを見ながら首をかしげる。
「おりますよ。今、席をはずしてますが、すぐもどります」
「ほんま。あとで、そっち行くゆーといて」
「かしこまりました」
そのやりとりがあまりに親密で、俺らはあっけにとられていた。
一方で横山さんは、ご機嫌だ。
「接客もプロ級よ、全員。めちゃめちゃ気持ちよく帰れるで」
「そ…そっか」
相葉さんは、苦笑してメニューを手に取った。
なんか…調子狂いますね、と勝利さんが言うから、俺はそうですね、と、頷いた。