第4章 夕虹
え?と思って、体を倒し、人だかりの前の方をのぞきみると、毎朝みる、色素のうすい柔らかな髪の毛が見えて。
イチゴオーレと、あんパンを手にして、その場から脱出しようと体をこちらに向けたその人は、間違いなく大野さん。
けど、うつむき加減で、押し寄せる人だかりを逆走しようとしてるから、俺に全く気づいてない。
そのとき、人だかりが崩れ、大野さんがその輪から押し出されるような形になり、彼のバランスが崩れた。
咄嗟に手をだして、大野さんを抱き止める。
「あ……ごめ……」
ずれかけたメガネをなおしながら、俺を見上げたその目が驚きに見開かれた。
「……松本」
「……あぶねーよ。ちゃんとふんばっとかないと」
ニヤリと笑むと、大野さんは安心したように俺の腕を掴んだ。
「ありがとう。なんか助けてもらってばかりだね」
「……いや」
ニッコリ微笑む彼が、異常に可愛らしくみえて、ちょっとドキリとした。
綺麗な人だな、とは思ってたけど、可愛いな、と思ったのは初めてだ。
そんな自分自身の感情に、戸惑う。
……男だぞ。大野さんは。
大野さんは、手ぶらの俺を見て、購買を振り返った。
「松本もパン?」
「……あ、うん」
「ごめんね、早く行って。なくなっちゃう」
「うん……え……大野さん……まさか、昼飯そんだけ?」
俺は、大野さんが手にしてるイチゴオーレとあんパンをみて、呟いた。