第6章 春の虹
「今日はさ、少人数やし、ちょっと趣向をかえた店予約してみてん」
横山さんが、ご機嫌な様子で腕時計に目をおとした。
張り切る彼について歩くのは、勝利さんと相葉さんと俺の4人。
いつも一緒に参加する中丸や、加藤さんたちは、今日は都合が悪いのだそうだ。
だからなのか、いつもいく居酒屋とは違う店に、と、横山さんは手配したらしい。
いつもとは違う賑やかな繁華街を通り抜けながら、俺は、どこからか漂ってくる焼き鳥のいい匂いに、鼻をひくつかせた。
なんだか急に腹が減ってきた気もする。
お酒はどうでもいいから、食べ物が充実してたらいいのにな。
「どんな店?」
相葉さんが、楽しそうに、左右の店を眺める。
「飯もうまくて、お酒もうまいとこや。ほいでめちゃめちゃシャレオツ。」
「お洒落?お前、なんでそんな店知ってるの」
「こないだツレに連れてきてもろてん。雰囲気いいで~」
横山さんは、あ、ここここ、と、1つのビルの前で立ち止まった。
重厚な黒い扉に閉ざされてるそこは。
「KING…?」
そう、店の名前が青く光っていた。