第6章 春の虹
担当の先輩、あるいは上司と、取引先の引き継ぎの同行は、週末まで。
つまり、俺は、相葉さんと週末までずっと行動を共にする。
隙のない人間を貫いてきた俺にとって、初日に大失敗をしてしまうのは本当に誤算であった。
入社してから必死で作り上げてきた完璧な自分を、自ら壊したも同然で、自業自得といえばそれまでなのだが。
はぁ…
ため息をつきたいのを耐えながら、相葉さんと並んで歩く。
多分全部、相葉さんのせいなんだ。
……何故かって…彼には、智の匂いがするから。
それ故に、どうしても嫌でも思い出す過去に、狼狽えた自分がいた。
だから、いつもはしない失敗をしてしまったんだよなぁー…
「二宮」
「あ、はい」
「ここの専務は、わりと気分屋だから気をつけて」
「はい」
「まぁ、おまえなら気に入られるだろうけどね」
言いながら、相葉さんは、こんにちはー、と元気に挨拶しながら取引先に俺を紹介していく。
相手方は、相葉さんのようにこんな出来た人の後の担当に、果たして俺が務まるのか、と値踏みするような態度を隠しもしない。
……くそっ…負けねーぞ
俺は、営業スマイルをはりつけて、丁寧に名刺を出した。