第6章 春の虹
おはようございます!と、颯爽と入ってきた中丸を無言でつかまえて、フロアの隅につれてゆく。
中丸は、その俺に気圧されるように、
「何?何?」
と、小さく連呼するから、俺は、小声でまくしたてた。
「ごめん、教えて欲しいんだけど。俺昨日どうしてた?」
「え?」
「だから!酔っ払って変なこといってなかった?」
「…覚えてねぇの?」
中丸が大真面目に聞き返してくるもんだから、俺は地団駄を踏みたい気分になる。
だから、それを知りたいっつってんのに!
「全然全く記憶がない」
そう口走ると、中丸は苦笑いして、まぁ…そうだろうな、と呟いた。
…その苦笑いはなんだよ!
俺が口を引き結んでると、
「…まぁ、あれからほぼほぼ寝てたけど。帰る時に起こされてからは、ほんの少しやばかったぞ」
と、教えてくれた。
「…やばいって?」
おそるおそるたずねる。
「係長に絡みまくってた」
「…どんな風に」
「おんぶして、とか」
…………。
「嘘だ…」
「嘘ついてどうすんだよ。だから、俺も有岡もすっかり酔いが覚めたっての」
……………
俺は、その場に座り込みたくなった。
最っ悪だ……