第6章 春の虹
気持ち早めに出社した。
昨日のことを、中丸に聞いておきたかったのもあるし。
何より迷惑をかけた(であろう)、相葉さんに謝らなくては。
早足でフロアに入ると、まだほとんど誰も来てなくて、しんとしている。
俺は、自分のデスクに鞄を置き、はあ…と俯いた。
相葉さんになんて言おう…。
今まで後輩という立場をソツなくこなしてきた俺にとっては、初めてと言っていいくらいの大失敗だ。
ひとまず送ってもらったお礼を言って。
先輩より、先に記憶をなくすほど酔っ払いになってしまったお詫びを言って。
そんで…
「おはよう。早いね」
「えっ」
突然頭上からふってきた声に、驚いて顔をあげた。
そこには、爽やかな笑顔の相葉さんがにっこり笑って立っていた。
「俺より早いなんて気合い入ってるじゃん」
「あ…えっと」
不意打ちだ。
俺は、頭が真っ白になる。
だめだ。
相葉さんを前にすると、なんだかいつもの俺じゃいられない…。