第6章 春の虹
Kazu
……あれ。
スマホのアラームで目を覚ました俺は、一瞬自分がどこで何をしてるのかわからなかった。
いや、ここ俺の部屋……
きちんと部屋着をきてる。
ハンガーには昨日着てたスーツがかかってる。
…………あれ……飲み会どうしたっけ。
俺、いつ帰ってきたっけ?
記憶がない。
俺は頭を抱えた。
怖……
酒に呑まれるなんて初めてだ。
よっぽど緊張していたのか。
やべ。全っ然、思い出せない。
ひどい失敗をしていたらどうしよう。
タメ息をつくと、その息があきらかに酒臭いことを自覚する。
この軽い頭痛は二日酔いなんだろうな。
とりあえず……会社に行かなきゃ。
吐き気がないだけマシだと感じながら、一階におりると、母ちゃんが苦笑いして揶揄ってきた。
「あら、おはよう。酔っぱらいさん」
……だよね。
俺は曖昧に頷いて、気になることを聞く。
「……ねぇ、俺、昨日どうやって帰ってきた?」
「……覚えてないの?」
「……うん」
母ちゃんは、あきれたように肩をすくめた。
「すっごい男前が、あんたをタクシーで送り届けてくれたわよ。通り道だから気にしないでって」
「……どんな人」
「アイバさんって言ってたかしらね」
……激ヤバだ。