第6章 春の虹
やがて、タクシーは、俺の見知った地域を走り出した。
ドライバーに住所は告げてるけど、詳しい家の場所は、二宮くんに聞かないと……
「ね、二宮起きて。家の場所説明してくんないと……」
ポンポンと、頭を軽くたたいて、覚醒を促すと、二宮くんは、小さく身じろいだ。
「んー……」
「二宮」
「……と……」
「起きて」
「……と……ごめん……」
「……二宮?」
「ごめ……さと……」
「……」
俺は思わず固まった。
寝言にしたら、なかなかの衝撃。
さとって……智のことでしょ?
……ごめん、って……
喧嘩でもしたのか。
それとももっと根深い何かか。
やっぱり智の家に姿をみせなくなったのは、何かあったんだろう。
過去に、二宮くん最近見ないねって、呟いたら、智は複雑な顔になっていたから、それ以来二宮くんの話はしないようにしてたんだけど。
まあ……知らないフリをしてやるのが一番大人な対応だな。
「……おーい。二宮。起きろ」
俺は、何も聞かなかったことにして、二宮の肩を少し強めに揺さぶった。