第4章 夕虹
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昼休み。
ポケットの財布を確認しながら席をたつ。
母さんが寝坊したから、今日は弁当がない。
面倒だが、学食に行くしかないか……。
人が多いの嫌なんだよなぁ。
「あれ。珍しい。食べにいくの?」
弁当箱を開けて既に食べ始めてる風間に、声をかけられ、肩をすくめてみせた。
「そ。カレーでも食ってくるわ」
「この学校、カレーうどんがオススメらしいよ」
情報通な風間の言葉に、思わず考えてしまう。
「うどんかぁ……ちょっと考える」
言って手を振り、教室をでた。
学食は安いけど、ざわざわしてるし、座れるところも限られてるし、これまでなるべく避けてきた。
教室で、風間や他のクラスメイトと、のんびりと、飯を食う方が性にあってるからだ。
それとも……パンでも買って、教室戻ってもいいか……。
それならば、風間たちと食えるな。
そう決めた俺は、購買部の方に視線をやり、目的地をかえた。
購買の前も、人が鈴なりだが、チャッチャと選んで金を払えば、きっと早いはずだ。
足早に人だかりに近づいて、一番後ろから、背伸びをしてパンのケースを覗いた。
焼きそばパンや、コロッケパンのような惣菜パンは残り少ない。
あんパンや、クリームパンはまだ余裕はありそうだけど。
……焼きそばパンとカレーパンと……あんパンかな。
考えながら目星をつけ、手を伸ばそうとしたら、目の前の背の高い学生に隠れてみえなかった位置からでてきたほっそりした腕が、あんパンを一個取った。
「あとイチゴオーレください」
そのまま、至近距離で、聞き覚えのある声がした。