第6章 春の虹
ぐにゃぐにゃの二宮くんは、タクシーに乗ったとたんに、船を漕ぎだした。
車の揺れにあわせて、小さな頭がフラフラ動いてる。
心なしか、くぅ……くぅ……、と寝息まで聞こえるような気がするのは気のせいだろうか。
かわいいなぁ……
そんな無防備な彼を眺めながら、微笑ましい気分になった。
勝利も最初は、すぐ真っ赤になってからかわれてたっけな……
二宮くんより数年年上の勝利は、新人で配属されてからずっと本社勤務だ。
仕事はもちろん、飲みの場での振る舞いの、あいつの成長を最初からずっとみてるだけに、二宮くんがあの頃の勝利と重なって初々しい。
異動初日のプレッシャーもあっただろう。
それゆえに、いつもよりアルコールが異常にまわってしまったのかもしれない。
しょうがないか……一日中気をはってただろうしなぁ……
そのとき、カーブの動きにぐらりと重心のかわった二宮くんの体が、ゆっくりと俺にもたれかかってきた。