第6章 春の虹
数秒考えた。
……給料でたばっかだし。
わりと懐はあったかいし。
……タクシー乗っちゃうか。
よし、決めた、と俺は二宮くんの腕をとった。
「俺の家の方面みたいだから、二宮は俺が送るわ」
「え。でも……」
「そんなのご迷惑じゃ……」
中丸と有岡が、戸惑うように声をそろえる。
異動してきたばかりの若造が、本社の役席にいきなり迷惑をかけるなんて、やばい、と顔にでてる。
俺は、ふふっと笑った。
真面目な子達だな。
「怒ってないし、あきれてもないから安心して」
「……そう……ですか」
「いきなり、二宮の素がみれたから、明日から仲良く仕事できそうだよ」
軽口をたたくと、二人は、ほっとしたような顔になって、よろしくお願いします!と、頭をさげた。
「よぉーし、ほんじゃ、おまえらは二件目いくで」
それまで、様子をみていた横山が、つかまえた、とばかりに二人の肩を後ろからがばっと抱いた。
「ええっ?!」
「え、今からですか?!」
「あったり前田のクラッカーや。飲んだあとはラーメンに決まっとる。ほれ、ついてこい」
「クラッカー……?」
「横山さん!古いっすよ!この二人わかってませんよ!」
勝利の絶妙なツッコミに、ワイワイいいながら、二陣目が歩いて行く。
俺は、ホカホカしてる二宮くんをよいしょ、と
もう一度ささえなおし、タクシーを拾うべく大通りに向かった。