第6章 春の虹
Aiba
二宮くんは、智の部屋によく泊まりにきてた色白なおとなしい子、という印象だ。
ああ……でも、たまに差し入れにいくと、智の後ろでぺこりと礼をしてくれてたっけ。
どっちかといえば、無愛想な子だったような気もする。
でも、人嫌いの智が家に入れるってことは、気があってるんだろうな、と思ってたし、俺の中では智を任せられる子だという位置づけではあった。
しかし、そんな彼の姿はある時期を境に、全く見ることはなくなった。
智の現在のパートナーの潤。
びっくりするほど派手な顔立ちの男前。
けど中身は、智をひたすら愛してくれる可愛らしい男。
あいつが現れたあたりから、まるで交代するように智の隣は、二宮くんじゃなく潤のものになったのだ。
二宮くんがただの友人なら、智が潤とつきあいだしてからも、姿は見かけるだろう。
だが、それがなくなったということは、……そういうことなのだと思った。
一つの想いが花開いた影で、また別の一つの想いは消えたのかもしれないな、と思っていた。