第6章 春の虹
「さっきから見てたら、二人とも野菜しか食ってないじゃん。遠慮しないで刺身ガバッといっちゃいな」
「あ……ありがとうございます」
中丸が嬉しそうに、鯛やらマグロやらを皿にのせる。
俺はアルコールを断った手前、さらに刺身も苦手だとはいえず、仕方なく茹でたタコやワカメなど火の通ってるものに手を伸ばした。
けど、昔からナマモノはどうにも受け付けない。
うー……食いたくねぇ……
嬉しそうに、刺身をがっつく中丸を横目に、俺はそっと箸をおいた。
「相葉係長って、おいくつなんですか」
中丸が、もぐもぐしながら興味津々といった様子で、身を乗り出す。
「ふふ。君らよりだいぶオジサンだよ」
「ご結婚は?」
「してないよ。独身」
「ええっ!相葉係長くらいルックスよかったら、女の子がほっとかないような気がしますけどね」
…………いやまぁ確かに。
俺は妙に納得しながらも、中丸って意外と攻めた質問するんだなぁと思った。
俺なら多分ここまで突っ込んで聞けないなぁ……
中途半端に昔を知ってしまっているからかもしれないけど。