第6章 春の虹
横山さんがいうには、相葉さんは、
『せめて係長になって、後輩を指導する立場になってくれ』
と、上司に土下座されたから、今の役職をしぶしぶ引き受けた、ということらしいのだが。
……いや、土下座って。
それはないだろ。
「まぁ……そのへんは横山さんが盛大に話を盛ってるよな」
「たぶんな」
中丸と俺との見解が一致したところへ、
「飲んでるか?」
と、ニコニコしながら話題の人物が乱入してきた。
「あ、もうないじゃん」
相葉さんは、俺の隣に座り、俺のジョッキが残りわずかなのを見て、すみませーん、と、店員に手を上げた。
追加してくれるつもりだ。
「あ……相葉係長、俺もう……」
俺は、あわててとめる。
実は、俺はあまりアルコールは得意じゃない。
社会人としてのつきあいの一つだと思うから、一杯は飲むけれど、既に体も熱いしぼんやりしてきてるから、そろそろ水でも……と思ってたところだ。
そんな俺に、相葉さんは、そう?と、気遣う表情になった。
「じゃあ、二宮は烏龍茶にしとくね。中丸は?」
「僕は……ハイボールいいっすか」
「お、いけるじゃん」
手早くその場にいる人たちの追加のオーダーをすませ、相葉さんは、食べろ、とばかりに刺身の盛り合わせを俺らに寄せた。