第6章 春の虹
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「いや、正直これはチャンスだと思ってます!」
「うんうん」
「地方勤務だった俺が、本社っすよ!」
「せやな」
「もぉ~おふくろ喜んじゃって!」
「そーかーよかったやんー」
赤い顔で、ご機嫌にまくしたてるのは有岡。
アルコールが入ったらかわるタイプなのか。
可愛らしくておとなしい印象とのギャップがおもしろいのか、同じ営業の横山さんが、面白そうに相手をしてくれてる。
この関西弁の横山さんは、すごく元気で楽しい人だ。
この場にいるみんなに、分け隔てなく気をつかって、盛り上げてくれてる。
いつも幹事を引き受けてくれているってのも納得だ。
「……有岡、あいつ根が真面目そうだから、あとで素面にもどったら、落ち込むぞ」
あんなふうに先輩に絡むなんて……、と、中丸が、苦笑いしてぼやいた。
「まぁ……ねぇ」
生返事を返しながら、俺はもそっとサラダを頬張った。
海鮮が苦手な俺は、刺身やカルパッチョなんかは食えない。
だから、さっきからサラダばかり手をのばしてる。