第6章 春の虹
「有岡くんには……加藤」
「……はい」
寡黙そうな男前が手をあげた。
有岡は、とても人見知りだって言ってたけど、あの人は優しそうだから、大丈夫だろう。
少なくとも、中丸がつく亀梨先輩よりは、優しそうだ。
目に見えてほっとしたような有岡に笑いをこらえる。
部長が最後に俺を見た。
「二宮くんは……相葉」
「はい」
明るくよくとおる声がした。
……どこかで聞いた声。
声の主を探すと、左後方にいる背の高い青年が手をあげてるのが目に入った。
ドキリと胸が鳴った。
……この人……
優しげな目元。
笑うとできる笑いじわが人のよさを表してるよね、と
……かつて好きだった人と話をした覚えがある。
その人は、にこりと笑った。
久しぶり、とでもいうように、笑った。
確か名前は……雅紀さん。
名字なんて知らなかったけど、さとがお世話になっているという恩人、その人であった。