• テキストサイズ

Attack 《気象系BL》

第6章 春の虹



あらあら、と、母ちゃんがさし出してきたお茶をごくごく飲み干し、なんとか呼吸を整える。


「辛いよ……これ」

「え~そぉかしら?」


麻婆豆腐の味付けに文句をつけるふりをして、動揺しまくってる自分の気持ちを静める。

母ちゃんは、そんなことに気づきもせず、のんきに自分の湯飲みにもお茶を注ぎながら、懐かしそうな顔をした。


「さとちゃん……元気かしらね」

「……さぁな」

「冷たいわね。よく泊まりに行ってたくせに」

「……昔の話だろ」

「連絡はとってないの?」

「……とってない」

「ふーん……男の子ってドライなのね」



ドライか……


俺は、唐揚げを咀嚼しながら、かつて好きだった男の面影を思う。

めんどくさがりで、人嫌いで、なのに……甘えん坊で繊細で。

芯の強い男だった。
好きだった。ほんとに。

まさか、ぽっと出てきた同級生にとられるなんて思いもしなかったけど。


俺に向けられるふにゃりと微笑む顔も、柔らかな声も……全てをあきらめるために、大分時間を費やした。

綺麗に自分の気持ちにはけりをつけたつもりだったけど……名前をきくだけで動揺するなんて、修行が足りないよな。俺も。


自嘲しつつ、ポテトサラダを頬張った。
/ 725ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp