第6章 春の虹
「てっきりお嫁さんつれて帰ってくるかと思ってたけど」
ふふっといたずらっぽく笑って、母ちゃんは、ミニトマトをパクリと食べた。
俺は、苦笑いして肩をすくめる。
「んなもん……いるわけねーだろ。てか、つくる暇もなかったっての」
「そうなのー?あんた父ちゃんに似て母性本能くすぐるタイプだから、お姉さまがたがほっとかないでしょうよ」
「残念ながらほっとかれましたー」
「やあだ。カズの良さがわからないなんて、みる目のない社員たちねぇ」
「……別にいらねぇし、そんなの」
ふんと鼻であしらって、麻婆豆腐をすくう。
えらく真っ赤だけど、辛すぎじゃね?
恐る恐る口にしたとたん
「そーいえば、さとちゃんには、帰ってきたこと連絡したの?」
「……っ、ごほっ……ごほっ」
母ちゃんの爆弾発言に、思わず盛大にむせた。