第4章 夕虹
Jun
学校生活をするにおいて、きちんと意識していたら、学ぶ校舎が違っても、意外と他学年を目にする機会は多いことに気づいた。
あれから、初めて、学校内で大野さんを見かけたのは、移動教室のとき。
芸術の選択教科が美術のため、美術室に向かっている最中だった。
三年の校舎と、美術室のある校舎をつなぐ渡り廊下を風間と歩いてると、大きな荷物を抱えてこちらに向かってくる大野さんと鉢合わせした。
俺が、あ……という顔をしたら、大野さんも気づいたみたいで。
俺の視線で言いたいことが分かったのだろう。
「……今日の日番なんだ、俺」
ずり落ちそうなメガネを肩でなおしながら、大野さんは笑って、持ってる荷物をちらりと見せた。
箱には山のようにノートやプリントが入ってて。
そんな細い腕で大丈夫かと、思わず、
「手伝おうか」
と、口走ってしまう。
大野さんは、メガネの奥の目を真ん丸にして、きょとんとした。
「……ありがとう。大丈夫だから」
んふふと笑って、またね、とヨロヨロと歩いて行く。
ほんとに大丈夫かな……と、後ろ姿を見送っていると、
「大野先輩といつからそんなに親しくなったの?」
と、興味津々に風間が突っ込んできた。