第5章 白虹
俺は、経験はほぼないに等しい。
中学生のころ、その頃にいた彼女とキスくらいはしてるし、エッチも二回ほどしたけれど、それらはほんとにしただけ、のものだ。
気持ちいいとか感じる余裕もなくて、ただただ、大人の仲間入りしたかっただけ。
あるいは、あの頃は兄貴を好きだった頃だから、つりあうくらいの経験値が欲しかっただけ……だったように思う。
でも。
「ん……ふぁ」
ときどき、大野さんが熱い吐息をもらすのを、すべて飲み込み、何度も角度をかえて、口づけを繰り返してると、幸せで幸せで胸がいっぱいになってきた。
大野さんと……キスしてる。
恋人になって、こんなに深いものをするのは初めてだ。
けど、愛情を確かめるようなこの行為は、恋人だからこそ許されるもので。
口を開け、舌を差し出してくれる大野さんが、俺を受け入れてくれてることを証明してくれてるみたいだ。
好きな人の唾液って、こんなに甘いんだ……
俺は、大野さんの後頭部をささえたまま、夢中で舌を絡めあった。
すごく気持ちがいい。