第5章 白虹
そのまましばらく無言で見つめあう。
沈黙に耐えかねたのか、大野さんが、何か言おうと口を開きかけたのをみて、俺は、思わず彼を抱き寄せた。
「……まつ……もと?」
大野さんが戸惑うように、俺の肩口で小さく呟いた。
ゆっくり呼吸してるその温かな塊を、俺は、力をこめて、もう一度抱き締めた。
「ごめん……もう少しこのまま……」
「……うん……」
愛しいと思う気持ちが、内から溢れてとまらない。
もっとたくさん触れたいと思う気持ちに、必死にブレーキをかけ、それでも我慢できない思いで、俺はひたすら大野さんをぎゅうぎゅう抱き締めた。
「…………」
大野さんが、俺の背中に手を這わせた。
いい匂いのする髪の毛が、もぞりと俺の鼻先をかすめた。
そのとき、静かな部屋に、0時から始まるバラエティーのオープニングが流れ始めた。
俺たちの、今のちょっと緊張した気持ちにはそぐわない能天気な音楽。
…………!
我にかえった俺が、思わず腕を緩めると、腕の中の大野さんが、俺を見上げてきた。
「……あの……」
「あ……ごめん……」
あわてて体を離そうとしたら、大野さんは逆に俺にぎゅうっとしがみついてきた。
そして
「日付がかわるまで……一緒にいてくれて……その
…ありがとう」
とてつもなく可愛いことを言ってくれた。