第5章 白虹
Jun
想像通り、そのキャップは、大野さんにとても似合った。
耳あての位置が下すぎる気がして、こっちを向いてもらって調節する。
大野さん、頭が小さいから、ちょっとずれやすいんだよなぁ……
やっぱ、ワンサイズ小さい方が良かったかなぁ……
大真面目に考えてると、俺の手のひらが、大野さんの頬に、するっと触れた。
それは柔らかくて、スベスベで……ちょっと熱い。
瞬間、俺は、ハッと我にかえる。
すると、真っ赤になってる大野さんとばっちり目があって、
「あ!ごめん!」
あわてて手を離した。
「う……ううん」
大野さんがふるふる首をふり、キャップを深くかぶり直した。
照れてるのか、うつむいて顔をあげてくれない。
俺も、今更ながら照れてしまって、妙な沈黙ができてしまう。
えっと…えっと…そうだ、ケーキだ!
俺は、慌ててフォークを手に取り、
「たっ…食べよう!大野さん!」
……せっかく、バースデーソングを歌おうと思ってたのに、ぱくりと一口食ってしまった。