第5章 白虹
松本とすごす誕生日は、これまでにないくらい美味しくて嬉しくて楽しかった。
松本の兄貴の話には、お腹を抱えて笑うエピソードが満載で。
あの兄貴、あんなに冷ややかで、サイボーグみたいな印象だったのに、家では全然違うんだな、ってことがわかって、すごく面白かった。
玉ねぎを切るのに、本気でゴーグルする人なんか初めて聞いた。
今度会ったら、ぷって笑ってしまいそう……。
「だめだよ。笑ったら。俺が喋ったってばれちゃう」
大真面目な松本に、はいはい、と頷く。
満腹のお腹をさすりながら、ぬるくなったコーラを飲んだ。
…すると、しばらくして、松本は、おもむろにごそごそケーキの用意を始めた。
……え?
「…………まさか、まだ食えるの?」
遠回しに、あとにしない?という意味をこめて聞くと、松本は、笑顔で当然とばかりに頷いた。
「もちろん。今からがメインイベントじゃん」
「そ……そう?」
いつもの二倍は食ってる俺には、めちゃめちゃきついけど……祝おうとしてくれてる松本の気持ちは単純に嬉しい。
俺も手を伸ばし、食べ散らかしたごみを、ビニールに放り込みはじめた。
そうして机の上が、俺のショートケーキと松本のフルーツタルトだけになって。
さぁ……食べようか、というときに、松本は持ってきていたリュックから、小さな包み紙をだした。