第5章 白虹
「じゃあ……大野さん、お誕生日おめでとう」
「……ありがとう」
マグカップに、コーラをなみなみ注いで乾杯する。
松本が優しい笑顔でやたら俺をみつめてくるから、照れ臭くて、俺はうつむいて、もそもそチキンをかじった。
「うま」
「ほんとだ、うんま!コンビニのチキンってあなどれないなぁ」
松本が、驚いたように舌鼓をうつ。
俺は、一人で自炊がめんどくて、ちょっとお金が懐にあるときは、コンビニの世話になることが多い。
だから、当然このチキンも知ってる。
でも一緒に食べる人がいるというだけで、魔法がかかったみたいに美味しい。
いつもの何倍も美味しい。
「もう一個食う?」
「いいの?」
「いいよ(笑)……はい」
「やった。ありがとう」
モグモグ気持ちよく食べる人と……それが恋人ならなおさら。
どんな高級レストランのステーキより、素晴らしいご馳走だ、と思った。